おわりに ~フェイクニュースで損をするのは民である
さて、この本も長い旅の終わりに 差し掛かりました。
ここまでさまざまなフェイクニュースの例を挙げてきましたが、それによって結局、誰が損をするのかと言えば、それは私たち自身です。
情報を発信する人、それを考える人、政策をつくる人たちは損をしません。それは、彼らはウソをついたり、つじつまの合わないことをやったり、自分たちに都合のいい法令をつくったりするからです。その人たちは損をせずに、私たちが損をする‥‥‥。
昔は貴族がいて王様がいて、その人たちが支配をしていました。今は民主主義で選挙があって私たちの代表が国会に出ています。そのほかのこともかなり民主的になった。だから私たちは騙されないはずなのですが、昔よりも騙されている傾向にあるのはなぜでしょうか。
この本でも何度か記しましたが、昔の日本では殿様や侍が民のことを考えて政治を行っていました。民は政治のことを知らなくても一所懸命に自分が働けば幸福な人生を送ることができました。
ところが最近は民主主義になって選挙があって、むしろ自分たちの判断が国政に影響を及ぼすようになりました。その結果、私たちの判断自体が間違っていたら私たち自身に被害が及ぶという社会になったわけです。
『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060723 P227