
第6項 ハウス野菜、養殖魚は買わない ◎ そのわけ
ハウス野菜と養殖魚がテーマなのに、突然、液晶テレビとか、ラジオが出てきてビックリしたと思います。
でも、「環境とは視野が広いこと」ですから、どのように考えなければならないか、じっくりと説明します。環境に興味のある人は、ここで一つ考え方を勉強してください。
明治、大正、昭和と御代(みよ)が変わって、今は平成です。時代はずいぶん変わってきました。かつて、テレビを見ようとしたら街の広場に一つだけ街頭テレビがおいてあって、そこで大相撲を見たものです。電話もほとんどの家には無く、人を訪ねていくと「今、出かけています。3時間ほどたったら帰ってくる予定ですが、お待ちになりますか?」などと言われた方も多いでしょう。
それが、今はテレビはプラウン管でも古くなって液晶テレビが良い、さらには、地デジになると言って、十分に見ることができるテレビを捨てる時代です。自動車もほとんどの家庭が持っていて、携帯電話ですら誰でも持っている時代になりました。
ところが、テレビも自動車も、携帯電話も使っている人が「ハウス野菜は石油を使うから、私はイヤだ」と言うのは、まったく見当外れです。
私たちにとってテレビや携帯電話より食べ物が大切なのは確かですが、その食べ物を作る農業は、昔のままでそのままジッとしていなさいと言っているのと同じことなのです。
その理由を説明します。
日本は農業や漁業がすっかりダメになりました。今や日本の穀類自給率は27%になり、先進国としては「世界で最低」ですし、かつては魚の輸出国だった日本も、今では漁業も自給率が50%になってしまいました。日本の子供たちは外国の物を多く食べています。
その原因は何でしょうか?
日本人は工業に対しては、石油を使っても海を埋め立てても、あまり非難しないのですが、農業や漁業となるととても厳しいのです。
その結果、工業は大きなコンビナート、大工場を造ってテレビや自動車を大量生産しています。そして、そんな大工場で膨大な石油を使っても非難しないのに、農業がハウス農業をすると「石油がもったいない」と糾弾します。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251222
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