◎ 国民のことを考えて石油や石炭を使った電力を作る日本の電力会社
太陽光発電や風力発電などのことが出てくると、説得に手こずることがあります。太陽光や風力を支持している人は、「本来はその方が良いのに、電力会社がやらないから、できないのだ」と考えます。
でも、なぜ太陽光発電や風力発電が「良い、環境に良い」と40年も言われていて、しかも石油は不足してくるし、原子力は批判されるのに、なぜ、頭を下げても石油や石炭を使った火力発電と原子力で電気を起こしているのでしょうか?
それは、ズバリ! 日本の電力会社が本当に国民のことを考えているからです。
もし、環境運動団体の言うとおりに、火力発電所と原子力発電所を少なくして、太陽や風力発電にしたら、電気代は5倍以上になります。
現在の日本の電気代は、都会でもどんな田舎でも同じになっています。それは、都会に住んでいるから月に1万円ですむけれど、田舎では10万円というのでは田舎の人が大変だからです。
でも、どんなに田舎でも電柱を立て、長い距離をへて電気を送るのですから、高くなるのです。それを平均しているから、電気代は少し高めなのですが、私はそれで良いと思っています。
仮に電気代が5倍になるぐらいは我慢するとしても、下水道はほとんど水を送ったり処理したりするのは電気が主ですから、水道代も3倍ぐらいには上がるでしょう。
もし太陽と風力に換えたら、私たちの生活は一変し、水洗トイレ、エアコン、冷蔵庫などは全部、捨てなければなりません。1ヵ月の電気代が5万円、それに下水道など電気を多く使う公共料金が3万円取られるのですから、とうてい普通の家庭はやっていけません。
アメリカや中国のように国土が膨大であるとか、国の中にあまり使えない砂漠や不毛の土地があれば、そこで電気を起こして町の方に送電できるのですが、国土が狭く、人口密度が高い日本ではダメです。
自然エネルギーで有名なドイツですら、日本より国土面積という点では2倍も余裕があり、さらに森林が少ないので、その分も助かります。
技術は進歩します。だから永久にできないというのではなく、今はダメなのです。そして、太陽光発電に補助金や税金を出しているのですが、とんでもないことです。太陽光発電を研究している会社は日本を代表するような大きな会社で、有望なら自分の判断と自分のお金で研究ができるからです。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251229
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