◎ 日本は海の国
「養殖」というと悪いイメージを持っている人が多いと思います。
確かにハウス栽培や養殖漁業は石油も使いますし、自然に人の手を加えることでもあります。でも、その方が自然を守ることができます。ただ、養殖を始めた頃はわからないことが多く、特に「エサの与え方や養殖している生物からの排泄物」の処理がうまくいきませんでした。それが「養殖は海を汚す」という誤解に繋(つな)がっています。
正しく表現すれば「排泄物を考えない養殖は海を汚す」と言うべきでしょう。今では技術は進み、現在の養殖は海を汚しません。
でも、それは「汚さない範囲で養殖をしている」ということで、まだまだ工業のレベルからはとても生産性(能率)は低いのです。
そして、日本は国土(陸地)は狭いのですが、四面を海に囲まれているので、「200海里経済水域(「領海」よりも権利は少ないが、漁業のように経済活動ではその国の権利を主張できる範囲)」はとても大きいのです。つまり、日本は陸地だけを利用している分には「小さな国」なのですが、海を合わせると世界の6番目の大きさですから、「アメリ力や中国などと肩を並べる大国」になります。
また、日本は温帯にありますので、北は北海道の海から、南は沖縄までまんべんなく海を利用できることもとても有利です。
大いにハウスものや養殖ものを食べて、農業と漁業の人の収入を増やし、そこに携わる若い人を元気にして、技術も磨くような方向こそが環境を改善すると言えます。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251225
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