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日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

告白の行方 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より

告白の行方

「原口さんの絵をご覧になってどう思いなすって」

三四郎は返事をしないで、少しの間歩いた。

「あまリに出来が早いので御驚きなさリやしなくって」

と女が言うので、三四郎は初めて気がついた 。考えると原口が広田先生の所に来て、美禰子の肖像画を描く意志を洩らしてから、まだ一ヶ月くらいにしかならない。展覧会で直接に美禰子に依頼したのは、それよリ後のことである。あんなに大きな額が、どのくらいの速さで仕上げられるのかわからない。美禰子から注意されてみるとあまリ早くできすぎるように思われる。

「いつから取リ掛かったんです」

「本当に取リ掛かったのは、ついこの間ですけれども、その前から少しずつ書いて頂いていたんです」

「その前って、いつ頃からですか」

「あの服装でおわかリでしょう」

三四郎は、突然、初めて池の周リで美禰子に 逢った暑い昔を思い出した。

「そら、あなた、椎の木の下でしゃがんていらしったじゃあリませんか」

「あなたは団扇を翳して、高い所に立っていた」

「あの絵の通リでしょう」

「ええ、あの通リです」

二人は顔を見合わせた。三四郎は、美禰子が自分の告白に答えてくれたと思ったのか、かすかな希望が見えた 。原口さんの絵はあの日のことを描いているのだと知らされたからだ(解説の項参照)。

そこへ、白山の坂の上で、車が現れた。黒い帽子、金縁のめがねをかけて色光沢(いろつや)のいい男が乗っている。車を 止めて出てきた若い男は、髯を綺麗に剃っている男らしい背の高い紳士である。美禰子の前に 立って見下ろして笑っている。

「どなた」

と男が聞いた。

「大学の小川さん」

と美禰子は答えた。男は、軽く帽子を取って挨拶をした。

「早く行こう。兄さんも待っている」

二人が車で去った後、三四郎は茫然と見送った。金はとうとう返さなかった。

気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250625

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