十六 交際の誠実
「葉隠」のデリカシーは人との交際においても、真心が第一であるということを教えている。
この考えは現代にそのまま用いて、すこしも齟齬するところはない。
「『人の心を見んと思はば煩へ。』と云ふことあり。日頃は心安く寄合ひ、病気又は難儀の時大方にする者は腰ぬけなり。すべて人の不仕合せの時別けて立ち入り、見舞・付届(つけとどけ)仕るべきなり。恩を受け候人には、一生の内疎遠にあるまじきなり。斯様の事にて、人の心入れは見ゆるものなり。多分我が難儀の時は人を頼み、後には思ひも出さぬ人多し。」(聞書第一 一三五頁)
『葉隠入門』三島由紀夫 (新潮文庫) 20240811 P57