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日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

フランス国家の誕生 『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より

フランス国家の誕生

行こう祖国の子らよ
栄光のときは来た!

祖国への神聖な愛よ
みちびき支えよこらしめのわれらの腕を!
自由よ最愛の自由よ

たたかえわれらのその守り手とともに!

突然、沸いてきた感激の中で、ルジェ大尉の手は動き続け、歴史的な曲作りを終えたのは、夜明けを迎えた光がストラスブールの町を照らし始めた頃でした。ルジェ大尉は自分の体から興奮が消えて、そのまま深い眠りについたと伝承されています。
その日の夕方、市長の家で市長夫人同席の中で新しいこの行進曲が披露されました。
歴史的な多くの場面がそうであったように、その場に居合わせた人々は、まさかこの曲が未来のフランスの国歌になるなど誰も想像もしていませんでした。

「お集まりのみなさんは大変満足してくださいました」

記録に残っている市長夫人の手紙にはそう書いてあります。
不滅のメロディーが普通のほめ言葉でそのデビューを飾るのも、仕方のないことです。
そしてルジェ大尉の作曲したその歌はそのまま忘れ去られ、軍歌として作られたのに、行軍のときに演奏されることもなく、歴史の中に消え去ろうとしていました。
でも、これも歴史が証明するように、作品に宿っている本来的な力はやがて目を覚ますもので、そのまま消え去ることはありませんでした。しばらくすると、この歌は再び

どこからともなく歌われ始め、新しい歌「ラ・マルセイエーズ」は革命さなかのフランス全土に爆発的に拡がっていきました。

「なんという素晴らしい、心を奪う歌なのか!」

不思議な力を秘めたこの歌は、瞬く間にフランスのあらゆる戦場で唱われ、自由になった感激を味わいながら多くの兵士が死んで行ったのです。
ところで、ルジェ大尉は一夜の作曲で大作曲家になりましたが、もともとはそれほど才能がある男ではなかったので、再び優れた曲を作曲することはありませんでした。むしろルジェの晩年は、罪を犯して監獄に入ったり、ナポレオンの誘いを断って毒づいたりという偏屈な老人になり、片田舎でその一生を終わります。
なぜ、ルジェが「一夜だけ天才」になったのでしょうか。世界の歴史の大転換点にあって、軍靴の響く夜に彼は霊感を受けたのでしょう。歴史はナポレオンのような巨大な人物を作り出すばかりではなく、ルジェ大尉のような人を「一夜だけ天才」にさせたりもするのです。

日本でも幕末から明治維新にかけて、吉田松陰(よしだしょういん)、坂本龍馬、西郷隆盛、勝海舟など多くの傑物(けつぶつ)を一気に生んだことを連想させます。





『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)

『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250818
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