◎ 少し難しい自由討論の時間
少し難しい自由討論をしてみますので、そばで聞いてみてください。
武田: 日本人と同じアジア人に、餓死寸前の人が5位人もいるのですから、アメリカがバイオエタノールを推進しても日本は止めた方がよいと思います。
A氏: スウェーデンなどの北欧の国は積極的にバイオ燃料を利用していると聞いている。日本ももっと森林や畑を利用するべきだ。
武田: 確かに、スウェーデンは森林を木材として利用していますが、発電の半分は原子力です。
A氏: 涌いところを突いてきたな。では、ドイツでは風力発電が盛んだ。やはりヨーロッパの環境政策は進んでいる。
武田: ドイツの電力事情ですが、ですが、50%が石炭の発電所でC02を多く出しますし、35%がフランスからの購入も含めて原子力です。ドイツは温暖化防止に一番、熱心ですが、C02を出す石炭発電が多く、風力などは宣伝しているだけです。
A氏: じゃあ、武田さんはどうすればよいと言うのだ。化石燃料は無くなるし、自然エネルギーはダメ、バイオエタノールもダメじゃ、自動車は使えなくなるじゃないか!
武田: 空を飛びたいという希望があっても、墜落しない航空機がなければ、空を飛ぶことはできない」のは仕方がありません。技術がなければ希望は達成しないのです。今は、化石燃料の発電と原子力しかエネルギーの技術は無いのです。
A氏: だから石油を節約すればいいじゃないですか。
武田: それもダメです。石油はアラブなどの産油国が生産しますから、日本が節約しても他の国が石油を使い、無くなるまでの時間は変わりません。
A氏: 世界の人が一致協力しなければならない。
武田: それは無理です。だって、「節約しよう」と言っている先進国の人が、多くの石油を使っているし、日本も「節約する」と言いながら消費量を増やしているのですから。自分もできないのに他人を説得できません。
A氏: それじゃ、絶望的じゃないですか?
武田: そうではありません。日本は世界で唯一の「温帯の島国」で、もともと、気温は寒帯より暖かく、熱帯より涼しいのです。ちょっと前までは冷暖房は要らなかったし、国土が狭いからあまり交通にもエネルギーは要りません。
A 氏: でも、今は大量消費じゃないですか。
武田: それは、人工的な空間をそのままにして、リサイクルとかレジ袋などと環境に関係のないことをして、本当に大切な私たちの住環境は高度成長のときより悪くなっているからです。
A氏: というのは? もっと具体的に‥‥‥。
武田: 郁市に緑と牧場を作り、川の畔は土に戻し、高層ビルを止めて自然の風と日当たりで仕事ができるようにする:・・・・いくらでもあります。都心部はヒートアイランド現象などにより気温が高くなっていますが、それほど自然を破壊しているということです。まず「悪いところを直す」のが先決です。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20260102
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