第8項 トウモロコシで作ったエコバッグは土に戻るから環境にやさしい? ◎ そのわけ

私は最近まで「トウモロコシで作ったエコバッグ」というものを知りませんでした。この本を書くときに知って、思わず吹き出してしまいました。いやはや、おどろきました。
武田: トウモロコシを原料にしたエコバッグって、なんで「エコ」なんですか?
物知り: メーカーも環境団体もエコと言っています。
武田: 「エコ」という名前さえ付ければエコですか?
物知り: もちろん、内容もエコです。トウモロコシでできてますから、「自然からできたバッグ」です。
武田: レジ袋も石油という自然からできていますが。ただ、トウモロコシは今、生きていますが、石油は死んだ生物の死骸という違いはありますが、その違いですか?
物知り:石油は生物の死骸かも知れませんが、大昔のものだから形が変わっていますが、トウモロコシは食べ物ですから。
武田: でも、トウモロコシから作った材料は「ポリ乳酸」といって、トウモロコシとは全く違うのですが‥‥‥。
物知り: えっ! ポリ‥‥ポリ乳酸!? それ何ですか?
武田: トウモロコシから作ったエコバッグの原料の名前です。
物知り: でも、トウモロコシと似ているのでしょう?
武田: 全く違います。トウモロコシはデンプンなどでできていますが、ポリ乳酸はポリエステルの一種ですから、ペットボトルの方に似ていますね。
物知り: えっ!! ペットボトル???
武田: はい。科学の分類から言えばそうなります。
物知り: 分類なんかどうでもいいじゃないですか。何しろ、大地に捨てれば土に帰るんだから。
武田: どうして土に返るのですか?
物知り: 微生物が分解するのですよ。
武田: :そうすると、その土にはポリ乳酸を分解する微生物だらけになるのですね?
物知り: うーん、それはよく知らないな。
武田: だって、その畑にはポリ乳酸が栄養になるのですから、それを食べる微生物だけが大繁殖するしかないですよ。
物知り: それは大変だ!
武田: ではなんでエコと思ったのですか?
物知り: ううう、エコと言うから‥‥。
武田: ご私は長い間、ポリ乳酸のような「高分子物質」の分解の研究をしてきましたが、ポリ乳酸を熱分解すると、猛毒のアセトアルデヒドが多く出ます。
物知り: 猛毒、アセ‥‥アルデヒド‥‥。
武田: ええ、毒入りキャラメル事件のアセトアルデヒドです。
物知り; えっ!じゃあ、ダメじゃないですか!
武田: :危険だと思いますよ。だって、ポリ乳酸という材料はこれまで人類が使ったことがないのですから、その意味でも危険ですよ。
物知り: ‥‥でも「エコ」と ‥‥
(注)毒入りキャラメル事件、日本で販売されていたキャラメルに「アセトアルデヒド」が混入していたと大騒ぎになり、日本のキャラメルメーカーが600万個以上のキャラメルを廃棄した有名な事件。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20260103
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