◎ ハウス栽培、魚の養殖は、実は正しい方向なのです。
別にハウス農業がそれほどの排気ガスを出すわけでもなく、特に周辺の人に迷惑をかかることもないのですから、工場よりは環境にはよいのです。
でも、みんなが誤解して、農業を痛めつけている間に、日本の農業や漁業はすっかりダメになり、工場に勤めている人は給料が高いのに、農業や漁業の人は低い所得で泣いています。
もちろん、工業がこれほど発達しているのですから、農業や漁業も発展しないと誰も農業をやる人はいなくなるでしょう。
でも、効率を改善すると言っても、農薬や化学肥料をふんだんに使うのは、問題かも知れませんが、育てるときにハウスを使って栽培しても、それで食料品が危険になることなどありません。畑でとれる量を増やすには、暖かい環境で育てることはとても大切なことです。
私たちは雰囲気に流されて、ハウス栽培や養殖を非難しているのではないでしょうか?
実は、ハウスや水耕栽培が進歩すれば、害虫や病気にかかりにくいので、農薬や肥料を少なくできます。それより何より農家の収入が増えて、「自分で食べ物を作り、日本人に食べてもらいたい」と言う人が増えるでしょう。そうすれば、子供たちにも日本でとれたものを食べさせることができますから、ミネラルのバランスを失うのではないかという心配も減ります。
また、外国の物を農薬や毒物に心配しながら食べることも少なくなるでしょう。
ハウス栽培と同じように、漁業では養殖というのは人間が海の生産を管理するのですから「乱獲問題」なども起こらない優れた方法です。
そして、工業が大規模になり自動化されるように、農業がハウスなどを使って近代化しなければならないのと同じように、漁業も海から自然にとれる魚や海藻だけではなく、もっと積極的に海を利用しなければ、日本は他の国に勝つことはできません。
日本にとって海は貴重な資源ですから、それを有効に使うような方向に行くことは実は正しいのです。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251223
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