ハイドリオタフィア
イギリスの医者、神学者・ブラウン博士が一六五八年に出版した著書『ハイドリオタフィア』で、原題『Hydoriotaphia Urn Buirl (水壕埋葬、古代ローマ、ギリシャの骨壷埋葬) 』である。人間が故人を墓に埋葬する慣習や骨壺等について考察した書。
第10章の原文に、次の文章がある。「『寂莫のケシを散らすや頻りなり。人の記念に対しては、永劫に値すると否とを問うことなし」という句が眼についた」
ここでは「人の記念」「永劫」がキーワードであるが、これは、「この世にいない人の記念」である。この第10章で、美禰子が 、三四郎との出逢いの記念に、あの日の美禰子の姿を「森の女」の絵の中に残そうとしたことをイメージさせる。美禰子は結婚して三四郎の前から永遠に消える人である。
気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より R0720250628