広田先生宅
講義が終ってから、広田先生の家へ寄ってみた。広田先生は昨夜遅か ったので、今日は学校から帰るなリ、そ のまま茶の間で寝ている。
婆さんに聞いたら、先生は与次郎と遅くまで話していたせいだと言う。今日の学校の様子では、与次郎は相変わらず元気そうにしていたから、大した事件にもならずに済んだのだろう。
しかし、三四郎には、昨夜どんな話があったのか想像はできない。
長火鉢の鉄瓶はちんちん鳴っているが、先生は安眠している。三四郎は「ハイドリオタフィア」を返そうと思って持ってきたが、また読み始めた。ぽっぽっ拾い読みするが、なかなかわからない。ロ ーマ人やギリシャ人が墓の中に投げる花について書いてあるようだがどうもわからない。広田先生は何故こんな難しい本を 貸したのだろうと思ったが、何故か三四郎の興味を惹く。先生自身が「ハイドリオタフィア」じゃないかと思った時、むっくリと起き上がった。
先生に「ハイドリオタフィア」の意味を聞いてみたら「どうやらギリシャ語らしいが自分にもわからない」と言う。欠伸をした後、今、面白い女の夢を見たと言う。しかし起きたばかリなので、先に風呂に入リた いと誘われたので風呂に出掛けた。風呂から上がると、また 先生の家に寄った。
『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より R0720250702