白人社会は黄色人種の日本国を敵視した
それでも、そのうちに日本も植民地になるだろうと欧州列強は考えていました。
ところが案外と日本は強かった。それは、日本が徳川幕府の時代に鎖国できていたというのと同じで、明治になってからも幕末の不平等条約の撤廃を目指しながらも外国と対等に渡り合っていました。
清国はそうではありませんでした。「アヘン戦争」(1840~1842年)ではイギリスにこてんばんに負けて、満州もロシアに侵されるという状態でやっとのことで生き残っていたわけですから、日本の生き残り方とはまったく違っていました。
とにかく有色人種で独立を保っていたのは世界中で日本だけでしたから、そうなるとすべての白人の国、アメリカ、ロシ ア、イギリス、フランス、ド イツ等々は、みんな日本のことを憎らしいと思うわけです。日本とイギリスは事情があって一時的に同盟を結んだこともありましたが、基本的には「日本」「全世界」という構図にあったのです。
まず「日露戦争」(1904~05年)が起こります。当然ロシアが勝つものだろうと他の国々は思っていましたが、日本が勝った。「第一次世界大戦」!1914~18年)のときにはドイツが太平洋のあたりを支配していましたが、日本はこれと戦って勝った。
そうしてますます日本が強くなって、アジアの一角に日本だけがいる。これをどうにかしようということで、1930年代の後半になると「ABCD包囲網」というものがつくられました。Aはアメリカ、Bはイギリス、Cは中国、Dはオランダです。
そのころ中国は自分の国を自力で保つことができなかったので白人側に従属するような恰好になっていて、これを白い中国人と言いました。中国人を蔑視しているわけではなく、事実として白人側に寝返ったのです。
このABCDで日本を包囲して、最後に残った有色人種の国である日本を潰してしまおうということになりました。そして、アメリカを中心としたABCD同盟は「日本には石油を輸出しない。鉄鉱石も輸出しない」という強権を発動したのです。
『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060713 P198