清王朝や李氏朝鮮は、指導層がよければ国民は捨てる「国」
だから簡単に、ロシアが朝鮮の領土を縦断すること、釜山のそばに軍港を造ることを認めます。
そこでさらにロシアは釜山の軍港から、日本の長崎、さらには台湾まで進出する計画を立てました。ロシアは南のほうに自由に出ることができる軍港や商業港はどうしても欲しい夢でしたが、まさかこんなに簡単に手に入れることができるとは思っていませんでした。
ロシアはウクライナ方面でも黒海を経てギリシャのほうへ出ようとしていましたが、当時の強国だったオスマン・トルコに抵抗され、さらにはオスマン・トルコに戦争を仕掛けてそれを破ると英仏連合軍が出てくるという状態で苦杯をなめました。
だから満洲や朝鮮に、何もしないで少しの付け届けで南に出ることができるのは意外でもあり、「アジアに行くとこんなことが起こるのか!」とビックリしたのです。
そこで「図に乗って」と言って良いでしょう。ロシアは満洲に鉄道を敷き、旅順とウラジオストクに軍港を造り、そこに東洋艦隊を配備します。
もともとロシアは北海にパルチック艦隊という主力艦隊がありましたが、なにせ母港が北海にあって冬には出港できないという状態だったので、どこかに「不凍港」が欲しかったので、「いっそのこと長崎か台湾に軍港が欲しい」と欲を出したと考えられます。
当時のロシアは帝政で、ニコライニ世の治世でした。彼が特に凡庸であるとか、横暴であるとかいうことではなく、当時の「白人の秩序」=「白人以外の土地や国は自分の思うとおりになる」という頭しかありませんでした。
そして、さらに清王朝や李氏朝鮮が、ニコライニ世が思っていたとおりの国(国の形はしているが、指導層がよければ国民は捨てる国)であることがわかったので、順調にシベリアからハルピンを経由してウラジオストクまでの鉄道と、ハルピンから旅順への南満洲鉄道を建設し、旅順に軍港を造ることに成功したのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250918