俯瞰的歴史観に欠ける日教組の誤った指導によって、日本の正義が失われた
しかし、全体を見る歴史観というものに不足し、日本という特殊な風土と歴史を持ったことをあまり考えずに、とにかく日教組が社会で高く評価されるために、日本を悪く言うことに集中したのです。
本著は、「ナポレオン」と「東條英機」という二人の英雄を比べて、一人はフランスの人権宣言を受けて諸国の王族と戦った英雄であり、もう一人は日本の人種差別撤廃条約を受けて白人と戦った英雄を描くことを目的にしています。
フランスの人権宣言はフランスの革命派によってなされましたが、それと対比することができる日本が提案したパリ講和条約の人種差別撤廃は西園寺公望(さいおんじきんもち)や牧野伸顕元外相という日本政府の中枢部が計画し、国際会議で提案し、交渉を行ったものです。
最終的にはアメリカの抵抗にあって、「可決」されるところまでは行かなかったのですが、それはフランス革命の人権宣言と同じというより、国際会議で提案され、賛成を求めたという点で、人権宣言よりもう一歩、踏み込んだものだったのです。
提案が白人に拒否されるのは当然です。白人のほうは突如として人種差別を撤廃するとなると、白人がほとんどの有色人種の国を占領していたのですから、それを維持することはできなくなるでしょう。
占領を維持するということは、占領された国民が「これで仕方がない」とあきらめていることが第一の条件で、いくら武力が違うからと言っても、たとえば人口が3000万人ほどしかいないイギリスが、インドやアフリカなどの人口の多い国を押さえつけておくことはとても難しいのです。
毎日の食事を世話する植民地の給仕が食事に毒を盛るかも知れませんし、イギリス人が住んでいる住宅の門番も、また現地人なのですから、寝込みを襲われればそれで終わりです。
だから、植民地を支配している白人にとってみれば、なにがなんでも「白人は偉い俺たちとは違う人間だ」と有色人種の人が錯覚してくれなければならないのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251005