世界史を塗り替えた、日本の勝利!
日本はロシアに開戦し、陸軍は乃木希典将軍が二〇三高地の激戦を制し、続く奉天(ほうてん)の会戦で世界最強と言われたロシア陸軍を撃破します。
日本海軍は、まずウラジオストクと旅順にいたロシア東洋艦隊を港に押し込め、遠く、ヨーロッパの北の北海からアフリカの喜望峰をまわって延々と遠征してきたロシアの主力艦隊であるバルチック艦隊を日本海で熾滅(せんめつ)しました。
日本陸軍もかなりの奮戦をしたのですが、なんと言っても世界の歴史から言うと東郷平八郎将軍が率いた日本の連合艦隊がロシアのバルチック艦隊をたった一回の日本海海戦で、ほとんど全部の敵艦隊を沈めてしまったのには世界がビックリ仰天したのです。
もちろん、偶然に勝ったのでもなく、神風が吹いたのでもありません。日本はやっとのことでアルゼンチンなどから近代戦に役立つ戦艦を購入し、国内では下瀬火薬や伊集院信管という高性能火薬と起爆剤を発明、それに加えて戦闘艦の射撃訓練を繰り返しました。当時の記録を見ると、ロシア艦隊の射撃と比較すると、弾丸の発射間隔と命中率を掛け合わせると、実に敵の10倍の威力があったと計算されます。
日本軍に精神論が登場するのはまだ先のことで、日露戦争当時は「現実に戦う力と技術がなければ勝てない」というまっとうな考え方だったのです。
世界史を見ると、有色人種が白色人種に戦闘で勝利したというのは、1529年のオスマン・トルコのスレイマン一世によるウィーン包囲戦以来です。でも、トルコ民族というのは純粋なアジアの民族というより、アーリア人系でもありますので、本当にアジアの国がヨーロッパに優位に戦ったのはモンゴルのチンギス・ハーン以来と言っても過言ではありません。そうなると、日露戦争で日本が戦闘では大勝利したのは実に600年ぶりとも言えるのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250922