イギリスとフランスは戦争ばかりしていた
それでは、14世紀から19世紀までの、イギリスとフランスの主な戦いを挙げてみましょう。
1337ー1453年 百年戦争
1508ー1516年 カンブレー同盟戦争
1522ー1526年 第一次イタリア戦争
1542ー1546年 第四次イタリア戦争
1618ー1648年 三十年戦争
1666ー1667年 第二次英蘭戦争
1688ー1697年 九年戦争
1701ー1714年 スペイン継承戦争
1740ー1748年 オーストリア継承戦争
1756ー1763年 七年戦争
1775ー1783年 アメリカ独立戦争
1792ー1802年 フランス革命戦争
1808ー1814年 ナポレオン戦争(半島戦争)
1815年 ナポレオン戦争(第七次対仏大同盟)
このように、1337年に百年戦争が起こってから、「イギリスとフランスは戦争ばかりしていた」と言えます。イギリスとフランスはドーバー海峡を隔てて対峙(たいじ)しているのですが、その距離は約34キロメートル。
それに対して、日本と朝鮮半島の間の対馬(っしま)海峡は約200キロメートルです。ちなみに、「津軽海峡冬景色」の歌で有名な、本州と北海道の間の津軽海峡は約20キロメートルです。
つまり、同じ海峡を挟んだ国同士と言っても、フランスとイギリスの距離は日本と朝鮮の6分の1程度で、どちらかというと本州と北海道のほうが距離感としては似ています。そのため、日本と朝鮮、日本と中国の間でも2000年間で少しのいざこざはありましたが、その回数はイギリス、フランスと比べて圧倒的に少ないのです。
日本側が朝鮮に出て行ったのは、「白村江の戦い(はくすきのえ)」(まだ日本が西日本と南朝鮮で構成さ
れていた時期でもありますが)と「豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)」「日露戦争」、朝鮮側から日本を攻めてきたのが「元寇」で、どれも短期間で終結していますから、先ほどの一覧でわかるようにイギリスとフランスの間の戦争の数とは比較になりません。
また、イギリスはたびたびフランスや周辺国の領土を占領しています。日本では1910年から1945年までの35年間、日本が朝鮮を占領していたことで、韓国からは「この怨みは、千年は忘れない」と言われていますが、そんなことを言えば、イギリスとフランスは、1万年以上は憎しみ合わなくてはならないでしょう。
もっとも、ヨーロッパ、.さらにはアーリア人の世界では侵略は日常的なことで、アジア民族、特にアジア海洋民族とヨーロッパの人たちとは戦争に関する考え方がそうとう違うことも原因しています。
つまり、感覚としてはイギリスとヨーロッパ大陸はほぼ一体でしたが、日本と支那大陸は別のものだったのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250808