「白人には敵(かな)わない」とは思わなかった日本人
当時は、アフリカはもとよりアジアの国の人の多くは「我々は到底、白人には敵わない」とあきらめていました。しかし、日本だけは武士の魂、大和魂などが色濃くあり、決して精神的にもくじけませんでした。その―つの例を示します。
幕末の科学技術のところで幕府の開成所の役割を書きましたが、その後、この施設は現在の東京・竹橋にある学士会館に移り‘1886年には本郷に移動して本格的な日本の工学が開始されます。
そのとき、大鳥圭介元老院議官は次のように演説しています。ほぼ原文のまま掲載しますが、それはこの文章と本著の中心である「大東亜会議」の宣言が一対のものになっているので、きわめて重要だからです。ただ、読みにくいので後に要約をつけました。
吾人亜細亜洲人ハ何故二欧羅巴洲人二及バザルヤ。
地積ノ大小ヲ問ヘバ、亜細亜全洲ノ面積ハ幾ンド欧羅巴ノ六倍アリ。人ロノ多寡ハ如何。亜細亜全洲ノ人口凡、六億、欧羅巴ノ人口凡三億ニテ、即二倍ナリ。(中略)
然ラバ、版図ノ大小、人ロノ多寡、開闘ノ時代ニテモ亜細亜洲ガ一番ナルベキニ、何故二亜細亜人ノ領分ガ欧羅巴、亜米利加、亜弗利加、豪珈多利亜二無クシテ、却テ亜細亜、亜弗利加等ノ国々ハ欧羅巴人二掠略サレシャ。又何故今日農工商ノ事ニテモ交際上ニテモ欧羅巴人二蔑視サレテ頭ガ挙ガラヌカ。之ヲ考レバ、泣クニモ泣カレヌ歎ハシキ次第ナリ。
之ヲ要スルニ、皆学識ノ虚実卜智カノ強弱トニ縁ラザルナシ。日本ハ亜細亜洲中屈指ノ独立国ナレバ、其臣民タルモノ能ク学問ノ軽重真仮ヲ弁識シ、上下共二勇敢進取百折不撓ノ気象ヲ養ヒ、空文浮辞二陥ラズ実理ヲ研究シ、実業二曼勉シ、死学問卜活学問トヲ分別シ、遠大ノ功績ヲ将来二期シ、日本人ノ品位ヲ高等二進メ、亜細亜人ノ惣代先覚トナラムコト、聴衆諸君ノ如キ少壮有為ノ人二望ム所ナリ。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250908