「人種差別撤廃運動」は日本発
この圧倒的な白人支配の中で、日本だけがまったく違う動きをしました。日露戦争で白人国家のロシアを破り、ロシアの進出をもとの満洲の北まで押し返しました。さらにヨーロッパで起こった第一次世界大戦では、日本はイギリス・フランス側につき、支那の山東半島のドイツ領と太平洋のドイツ占領の諸島を攻撃して、勝利をおさめました。
ちなみに、このときに支那は中華民国が代表的な政府だったのですが、「国」という成熟した状態はなかったので、山東半島で日本とドイツの戦いが行われているのに、「中立」を宣言していました。つまり、中国や朝鮮の人の「領土」というものの感覚は「国」ではなく「地域」でしたから、ドイツが占領している自分の勢力が及ばない地(現在の中国の山東半島)は「中華民国の領土」ではないので、そこで外国同士(日本とドイツ)が戦っていても「中立」があり得るのです。
日本の場合、「日本の領土は日本国」:という考えですから、たとえば四国で、日本国をさしおいてロシアとアメリカが四国を争って戦うなどということはあり得ません。
江戸幕府であっても明治政府でも、外国の軍隊が日本の国内で戦争をして、それを黙って見ていることなどないのです。日本人はそれが当然のことのように思っていますが、それは「日本国」というのがハッキリしているからです。
これまでもしばしば書いてきましたが、中国でもヨーロッパでも、「地域」はありますが、「国」はなかったのです。たとえて言えば、明治政府の力の及ぶところが九州、中国地方、近畿、中部、関東だけなら四国がどうなっていても関係ないということです。
だから彼らの感覚は、日本人のそれとはまったく違うのです。
事実、第一次世界大戦のときには支那の多くは中華民国が支配していましたが、山東半島はドイツ領でした。「国」がないので、中華民国が支配している地域が「中国」で、山東半島は支那ではありませんでしたので、そこで日本とドイツが戦っていても違和感はなかったのです。不思議ですね。 P141
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250929