「人種差別撤廃条約」をなぜ歴史教科書に載せないのか
それでは、なぜ、この日本の輝かしい「人種差別撤廃条約」が日本の歴史教科書に載っていないのでしょうか。その理由は次の二つが考えられます。
第一に、日本がアメリカに占領された後、7000冊に上ると言われる「焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)」、つまり連合軍や白人に不利な書籍を焼き捨て、大幅に日本の近代史を変えました。第一次世界大戦のあと、日本が提案した人種差別撤廃条約は正義そのものでしたので、それを阻止したアメリカのウィルソン大統領の”悪行”の歴史を消し去る必要があったからです。
第二に、戦後の日本の教育は日教組という偏見に満ちた自称「民主勢力」に牛耳(ぎゅうじ)られ、知識人の多くが占領軍の宣伝に負けて節を曲げ、日本人自らが「日本のしたことは誤りだった」という全面否定の思想に染まっていたことが挙げられます。
世界史のうえで輝かしいフランスの業績の一つとして数えられる、フランス革命や人権宣言の裏には、ギロチンを用いた大量の処刑、革命後の周辺諸国の干渉(フランスの革命をつぶそうという周りの国からの妨害)に対抗したナポレオン戦争など、「人間はみな平等だ」という考えを定着させるためには、膨大な血が流れ、ずいぶん、無理なことをしています。
それと同じように、日本は白人支配を打破して独立を守るだけでも大変だったので、その過程で若干の不都合はあったと思います。でも、本来ならそれを日本人が大きな声を上げて世界に宣伝するようなことではないのです。日本が戦争の中で、仮にフランス革命を上まわる矛盾や非道なことを行ったとしてもそれは仕方がなかったのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251004