日本の代表だった牧野伸顕は、恒久的な平和のためには人種差別撤廃が必要だ と演説
ともかく、パリ講和会議は続き、約一ヶ月後に日本の代表だった牧野伸顕(まきののぶあき)枢密顧問官(元外務大臣)は、国際連盟規約二十一条の「宗教に関する規定」に「各国均等の主義は国際連盟の基本的綱領なるに依り締約国は成るべく速に連盟員たる国家に於る一切の外国人に対し、均等公正の待遇を与え、人種或いは国籍如何に依り法律上或いは事実上何等差別を設けざることを約す」という条文を追加する提案をします。
実に立派な提案で、現在でも高く評価されます。つまり、人種や宗教の違いが戦争の原因となっていること、恒久的な平和のためには人種差別撤廃が必要だと演説したのです。
その結果、ベルギーが反対、ブラジル・ルーマニア・チェコスロバキアが提案を理解する発言をし、中華民国代表は意見を保留しました。
この牧野提案は、世界に報道されて反響を呼びます。それまで白人の圧力の下にいたリベリアやアイルランドなどでは好評で、アメリカでも全米黒人地位向上協会がコメントを寄せたのも当然だったでしょう。もしこのままこの条項が可決されていたら、日本外交上、もっとも輝かしい成果として歴史に名を刻んだと思います。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251002