共産主義の台頭
この時期、もう―つの大きな流れがありました。それは20世紀の初めに起きた「ロシア革命」と、それに続く「共産主義の拡大」です。
人間の平等や人種差別などと同じく、「働いている人は等しく給料をもらうべきか、それとも競争に勝ったものが儲けをとって良いのか」ということをマルクスとエンゲルスが考え、思想を作り、「共産主義」が誕生しました。
未発達の国で、それまで皇帝や殿様が治めていた国が、革命などもなく社会の変化もまだ封建的なときに、突然、民主主義になるとそこに住んでいる人の意識が進みませんので、混乱が起こります。そのような場合には、「選挙がなく、労働者のためだけを考えて政治を行う」という共産主義はかなりうまく機能しました。
だから共産主義は、まだ社会が近代化されていないロシアで革命に成功しました。ロシアは地理的にヨーロッパの辺境にあり、皇帝ー貴族—農奴という社会だったのですが、次第にヨーロッパの平等思想が入り、古い社会が崩壊していきます。そしてついに、レーニンらの勢力が当時のニコライニ世一家を殺害して、帝政ロシアは一気に共産主義に変わります。
それだけならまだ国際的な影響が小さかったのですが、共産主義にはもう―つの特徴がありました。それは「我々が目指している社会は”正しい”。だから、正しい社会を全世界に広めるのだ」という論理を持っていることでした。このことは当たり前のように見えて、実は「昔に戻る」ということでもあったのです。
現代では民主主義が当たり前ですが、かつては王政や絶対主義などがありました。王政というのは「王様が決めることが正しい」という思想で、民主主義は「多くの人の意見は違っていて、どれが正しいかを決めることはできない」という正反対の思想です。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251007