欧米の歴史観に追従する日本のマスコミ
歴史を整理したりまとめたりするとき、整理をしている最中に「現在の自分の利益や日本の利害」を考えないことが必要です。‘
つまり、まずは現在の利害や将来の状態を考えずに、歴史的事実(過去)だけを整理します。たとえば「もともと台湾はどの民族の領土だったのか?」ということを整理すると、整理の途中で「そこまで考えなくても良いだろう、台湾は支那人が住んでいるのだし、日本とも友好的だから」ということが頭に浮かんできますが、そうすると歴史的事実を正確に整理するということができません。
今後、現在の中国共産党が支配している”中国”が崩壊することもあります。内部から崩壊して自由主義に変わることもありますし、チベットやウイグルというような占領地帯の反乱も考えられます。そのときには台湾に逃げている「中華民国」が再び支那を支配し、昔と同じように日本とは対立関係になることもあり得るからです。
歴史に「もし」はないと言われますが、それはあまりにも単純な考えで、歴史を考え直すときには「もし」という仮定を置くことはとても大切です。それはとかく「事実だけを見る」ことによって、別の手段が執られたときの状態を考えることができないからです。
しかし、現実には、このリットン調査団の結論を日本の軍部、朝日新聞(当時は戦争を賛美していた)をはじめとしたマスコミが大反対しました。軍部は血を流して満洲をとったのですから、そう簡単に満洲を手放すことには抵抗があったのですが、日本のマスコミ、そのマスコミを指導していたいわゆる知識人は何を考えていたのでしょうか。
このとき、知識人は「知識のある人」として、白人の気持ちを推し量り、リットン調査団の結論が「名を捨てて実を取れ。それなら白人が植民地にしているところとの整合性がとれる」としていることがわからなかったのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251016