戦後知識人の失策と国際秩序の罠:リットン報告をめぐる日本の選択とその代償
日本の知識人の学識と知的レベルが低く、戦前も戦後も大失敗を続けています。それにNHKや朝日新聞という世論をリードするマスコミが追従するという図式です。
たとえば、日本が戦争に負けて占領軍が駐留すると、戦前の日本の素晴らしい行為や、アメリカなどが行った問題の行動はすべて歴史から消されます。7000冊以上と言われる焚書坑儒から始まり、東京リンチ(東京裁判)、日教組を使った民主教育などがその典型的なものです。
当たり前のことですが、戦いに勝ったものがその支配を正当化するためにあらゆる手段を使って、「戦前の日本」を悪者にしたのですが、それが理解できず、占領軍のやり方をさらに補強したのが日本の知識人(特に、東大法学部を中心とした最高学府の人たち)だったのです。
その結果、日本の論壇、教科書などはすべて占領軍に都合の良いように書かれ、多くの日本人が戦後70年を経ても、日本人なのに歴史を裏切って「反日」になってしまったという結果になりました。ともあれこのような事情の中で、日本政府も世論に勝つことができず、時の外相松岡洋右(まつおかようすけ)が得意の英語と自身がキリスト教徒であったことから、国連で名演説をうつのですが、事態は変わりません。
リットン調査団の報告に基づく決議案は、唯一日本が反対しただけで可決されました。
松岡洋右外相は国連の議場で席を立って、そのまま日本は国際連盟を脱退したのは有名な事件でした。
歴史の大きな流れから言えば、この成り行きは仕方がないものでもあるのですが、日本はリットン調査団の言う「日本も白人の世界に入れ」というメッセージを理解することができなかったのはやや残念です。
もし、単純に「他国を武力で制圧する」というのがいこと」なら、白人国家は世界全部と言ってもいいほどの植民地をすべて放棄しなければなりませんでしたが、リットン調査団の目的はもともと「白人の秩序を守ること、力が強ければ他国を占領しても良いが、それは白人に限る権利だ」というのが基礎にありましたから、第一に日本の満洲進出を露骨には許すことはできません。
日本がリットン調査団の真意を理解し、それに従い、白人の仲間入りをしたら大東亜戦争はなかったかも知れません。しかし現在の日本は、白人の仲間入りを断って、断固、有色人種の植民地解放に進んだことで大東亜戦争になり、白人との戦いを強いられ、敗北した。どちらが良かったのか……、考えどころです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251017