序章 【冷静な歴史の見方】過大評価のナポレオン、過小評価の東條英機
”英雄”と”A級戦犯々”
私たちはある人物を描こうとするとき、その人の生まれや育ち、小さい頃の生活、そして功成り名を遂げていくさまを描きたくなります。
しかし、それは小さなことかも知れません。もし、その人物が人類の未来を左右するような大きな舞台に立ち、そこで偉業を成し遂げたとしたら、その有様はその人個人の人生を大きく超えているからです。一人の人生よりも、人類全体の歴史のほうが遥かに大きいのは言うまでもありません。
ナポレオン・ボナパルトも東條英機も、ともにそのような歴史の大転換期にいて、その役割を演じた人物でした。一人はフランス皇帝としてフランス革命の後のヨーロッパに君臨し、もう一人は日露戦争という有色人種初めての勝利を受けて、一気呵成(いっきかせい)に「有色人種のすべての国の独立」という偉業を達成しました———。
ところが、歴史教科書をはじめ、日本のマスメディア、知識人などはこのような歴史観を持っていません。ナポレオンは歴史的な「英雄」として高く評価されていますが、東條英機は「A級戦犯」として低く評価されています。果たして、これは正しい評価でしょうか。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250728