人間は生まれながらにして不平等なスタートをしているのが現実
ただ、現在の社会で「人は生まれながらにして、みんな平等か」というとそうでもありません。たとえばイギリス王室に子供が生まれると、日本人までが大騒ぎをしますが、それは現代人も、「イギリス王室の子供は普通の人とは違う」と思っているからです。
身近な例では、親のお金や土地は原則として子供に相続されますが、これも人間がまだ「生まれながらに平等」ではなく、血筋や社会的立場によって「不平等なスタート」をしていることを意味しています。
それでも、やはりフランス革命の前後と、現在の「平等、不平等」では雲泥(うんでい)の差がありました。
フランス革命の前には、白人男性でも、第一身分(僧侶)、第二身分(貴族)、第三身分(平民)に分類されていました。人口比率は、第一身分が0.5%、第二身分が1.5%、そして第三身分が98%を占めていました。
第一身分と第二身分で国民全体の2%しかいないのにフランスの土地の40%を所有していましたから、第三身分一人当たりの土地を1.0とすると、第一、二身分の僧侶と貴族は実に33倍の土地を持っていたことになります。
フランス革命当時のヨーロッパは、江戸時代の大名が「石高(こくだか)」でその力を示したように、農業が主たる収入源だったので、土地が広いとそれに比例して権力も強かったのです。だから、土地の面積が33倍ということは収入が33倍と考えてよいでしょう。
現代の日本では、年収が1000万円以上の富裕層は全人口の4%。富裕層の平均所得は1500万円です。これに対して、1000万円未満の人は全人口96%で。その平均所得は360万円です。なので、格差はちょうど4倍になります。
現代の日本の収入格差が4倍なのに対して、フランス革命当時は33倍ですから、いくら今から300年ほど前といっても、庶民に不満がたまるのは当然でした。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250813