第2章 日本の特殊性 なぜ日本だけが白人支配から免れたのか?
「侵略の歴史」を美化する、欧米目線の歴史観
日本の学校で教える世界の歴史は、ヨーロッパ人が作った歴史です。これは歴史ばかりではなく、地理や社会、それに科学に至るまで”ヨーロッパ中心”の用語や考え方でできています。
たとえば、日本の学校では地理の時間に「ヨーロッパ大陸」という言葉を習いますが(本著の第1章でも便宜的に使いましたが)、ヨーロッパ地域が「大陸」であるはずはありません。世界地図を見るとすぐわかりますが、ヨーロッパはユーラシア大陸の西の端にあり、その地域を地理的に表現するなら「ヨーロッパ半島」です。
でも「半島」を「大陸」と呼びたい気持ちもわからないではありません。人間は常に自分が主人公で、神様は自分だけを重んじてくれると思いたいものです。ヨーロッパ人の「自分中心主義」、それがルネッサンスで力をつけた15世紀の終わり頃に爆発し、世に「大航海時代」と呼ばれる侵略時代を作ったのです。
もともと、ヨーロッパ人というのは4000年ほど前、カスピ海の北に住んでいた遊牧民アーリア人が数回にわたって「民族移動」し、東西に広く進出して形成されています。
最初はセム族という民族が住んでいた今の中東、つまりメソポタミア地方に移動して、新しい国を作り、その後は戦争に戦争を繰り返すという歴史でした。そのうち、東に行った人たちはインドまで到達し、インドに土着で住んでいた人たちを追い出してインド西部まで移住しました。
一方、西へ移動し始めた人たちは、南はイタリア、北はドイツからスウェーデン、そして一部のケルト人と呼ばれる人たちがイギリスに渡ったのです。
「インド・アーリア語族」とか「アーリア人」と呼ばれるこの人たちはもともと遊牧的な生活をしていて、決まった土地がなく、原則的には「他人の土地を奪って住む」という性質を持っていました。
たとえば、バルカン半島に進出したときには、土着の人をどんどん追い出し、それまでギリシャ地方に住んでいた人たちはたまらず地中海に逃げ、それでも追ってくるので、キプロスからシリアまで移動しなければなりませんでした。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250821