西欧礼賛の誤った歴史の伝承
日本で教えられる歴史では、白人が行ってきた醜悪なこと、暴虐行為はほとんど伝えられていません。むしろ「イギリスは七つの海を支配した」とやや輝かしいように伝えられますが、もちろん2000万人から3000万人ぐらいしか人口がなかったイギリスが、数億人が住んでいる「七つの海」を支配するには、暴虐の限りを尽くさないと支配できるものではなかったことも事実です。
イギリスの大きな植民地だったインドでは、有望なインドの若者が出現するとイギリス軍が二列縦隊を作ってそのインドの若者の家に行って、若者を引きずり出し、両手首を切り落とすということもありました。インドに有望な若者が現れて、インドが発展し、インドの人たちが「理由なくインドは植民地になって圧迫されている」ということを知れば、反乱が起こり、数の力でイギリスが負けるのが予想されるからでした。
経済面でもイギリスは巧みな方法を用います。インドから輸入する香料などを「ただ同然で買う」という悪辣(あくらつ)なことをしていました。
当時インドの通貨はルピー、イギリスの通貨はポンドでしたが、イギリスはインドから香料などを輸入するとその代金としてポンドで支払いをしていました。インド人はポンドを受け取っても国内で通用しませんし、当時はインド人が国外に出るということはほとんどなかったので、ポンドはまったく使い道がなく、その大半をイギリスのロンドンの銀行に預けました。
そして300年ほど経つと、イギリスはポンドの価値を切り下げます。そうすると、たとえば100ルピーに対して1ポンドという比率だったものが、10ルピーで1ポンドに切り下げると、それまでインドが持っていたポンドの貯金は実質的に10分の1になってしまいます。つまり、イギリスは巧みな方法で植民地として圧迫したばかりか、インドの人々をただ同然で働かさせたことになります。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250911