戦争をするか、植民地になるか
実はこのとき、日本は資金調達に国際金融関係にも依頼をしたのですが、後になってその見返りに満洲国や支那での日本の権益を求め、それが大東亜戦争の一っの引き金になったという裏話もあります。
今、安保法制の関係で「平和が大切だ」と言う人が多いのですが、明治の時代のように、列強が弱い国を自由に扱う時代に「平和を守る」ということはどういうことか、当時の日本人の気持ちになって考えなければなりません。
日本は軍隊を持っていましたが、他国を攻めるつもりはまったくありませんでした。
しかし、ロシアが日本を植民地にするということになると、前に示したように日本の有望な若者はロシア兵によって両手首を切り取られ、女性は乱暴されるでしょう。
日本も例外ではなく、大東亜戦争後に日本に進駐したアメリカ軍の慰安のために日本政府もかなり苦労した経験があります。戦時における女性の権利というのはなかなか難しい問題で、日本に進駐した兵士が「普通の女性」に乱暴しないように、政府がこっそりとアメリカ兵のための売春施設を作っています。
またベトナム戦争時に、韓国軍がベトナム女性をところかまわず乱暴したように、まだ「世界の戦争では一度も女性の人権が守られたことがない」という状態なのです。
また、第二次世界大戦後、今から60年ほど前に中国共産党がチベットを占領しました。チベットでどのぐらいの人が殺されたかについては諸説ありますが、ほぼ5人に1人が殺されています。
大国が戦争をして小国を侵略して、その後、長く統治する場合、占領された国民のほぼ5人に1人が殺害されるというのはそれほど奇妙なことではありません。軍人はもちろん、抵抗する住民、焼き討ちゃ乱暴されて殺される女性、住居を追われて凍死する老人などが出ます。
もし、日本がロシアに占領されたら、当時の人口が5000万人ぐらいでしたから、1000万人ぐらいが殺されていたでしょう。日露戦争は激戦が続き、将校兵士約10万人が命を落としました。つまり、「日露戦争」では、将校や兵士が10万人戦死してくれたおかげで、国民1000万人が命を救われたということになります。
かつて、「兵隊さんに感謝」と言われたのは、敵が攻めてきたときに「兵隊さん」が出征して敵の攻撃を防いでくれるから家族の命が助かり、女性が暴行されないという実感があったからです。
「軍隊があるから戦争になる」というのは現実を見ない人の考えで、現実には敵が攻めて来るのですから「軍隊があるから命が助かり、貞操を守ることができる」ということだったのです。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720250921