美禰子は詩人である
美禰子は白い雲を眺めて「舵烏のボーア(襟巻き)」と表現した。このように自然を見て感性豊かな詩的表現ができる。
一方の三四郎は雲を見て、あれは雪であると野々宮から聞いた通りに答える。即物的で想像の夢やロマンがない。
漱石の有名な逸話に、日本人の感性について、
「I love you」
を日本語に訳すると、
「月が綺麗ですね」
になると言うのがある。
日本人は古来、直接的表視を避けて、和歌や詩に託して聞接的に愛情表現をしてきた。
ここでは、まだ二人の関係は然していないが、後に美禰子がこの小説の中で、詩的表現を使っている時は、間接的に
「あなたを愛している」
ということを意味することがあるので注意を要する。
しかし、三四郎にはなかなか通じていない。このすれ違いが美禰子にはもどかしい。
『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より R0720250512