第14項 牛乳パックのリサイクル ◎ そのわけ

私は心が痛みます。というのは牛乳パックのリサイクルをしている人は、ほとんどの人が善意で、環境を少しでも良くするために自分でできることをコッコツやっているのです。
でも、冷たいようですが、それは「大人としては」ダメなのです。
かつて、日本が戦争に巻き込まれたときも、かんぜんと平和のために立ち上がった人もいるのです。先ほどあげた与謝野晶子もそうですし、小説「二十四の瞳」の小学校の先生もそうです。
社会全体が戦争に向かっているときでも、一人一人の大人の判断が子供の将来を決めます。
戦争は大人が始めたのですが、広島に落とされた原子爆弾で広島第二中学校の12歳から15歳の子供たちはほぼ全滅しました。直接的に子供を殺したのはアメリカですが、戦争に反対しなかった大人もその責任があります。でも、死んでしまった子供たちはその夢を果たすことなく無念の死を遂げたのです。
牛乳パックのリサイクルなど決してやってはいけません。このぐらい、わかりやすいものになると、もし人に勧められるままにリサイクルしたら、それは大人としての責任を果たしてないと言えるでしょう。
この項の私の話は、おそらく皆さんがこれまで努力してきたことを否定しているかも知れません。でも、勇気を持って事実を知り、それによって日本の環境を守り、良い日本を子孫に残す方向に進んでください。
牛乳パックは紙でできています。
紙は太陽の光という自然のエネルギー、持続性のエネルギーで森林が育ち、それを使って作られます。紙に使う森林は製紙業によって完璧に保護されていますから、森林を守るという面でも紙を使わなければなりません。
かつて、牛乳はガラスビンに入れられて各戸に配達されていました。家の前には決まって小さな木の箱がおいてあり、そこに朝になると牛乳屋さんが新鮮な牛乳を入れていったのです。
でも、それは大変な作業です。その日に飲む牛乳を配達するとなると、まだ太陽が昇らない時間に起きて、眠い目をこすり、寒い冬には震えながら牛乳を詰め、そして自転車で配るのです。もちろん、日本には坂道もありますし、それは辛い重労働だったのです。
今日は、太陽の光で育つ樹木から紙を作り、それに酪農業でとれた牛乳を詰めてスーパーで売ることができるのですから、本当に自然に良い、素晴らしいシステムなのです。さらに、この素晴らしいシステムに使う資源は少ないのです。
少し数字を挙げます。
日本人が一年に使う紙は実に3000万トンです。それに対して牛乳パックに使う紙は、わずかにその100分の1にしかすぎません。
人間には限られた時間しか与えられていません。
だから、本当に、環境を守るなら効果の大きいことをしないと効果が上がらないのです。
私は、「牛乳パックをリサイクルしよう」と呼びかけること自体、自然の利用を妨げていると感じるのです。
専門家も本当のことを言うのを遠慮していますが、子供のため、日本の未来のために知った方がよいと思います。
次に、牛乳パックをリサイクルするとどうなるでしょうか?
牛乳パックを開いて水道水で洗います。もちろん、水道水は自然に流れてくるのではなく、石油から電気を作り、その電気で大きなポンプを回して各家庭まで届けます。
水は、紙と同じように自然の利用ですが、電気は石油から作りますので、輸入しなければなりません。せっかく、自然から採った紙を、わざわざ石油を使ってリサイクルしているのです。
さらに、トラックで運び、さらに印刷のインキなどを取り除き、それを他の原料と一緒にして、紙を作ります。インキを取り除いたりするのにも多くの石油を使います。
このような紙のリサイクルの中身を知ったら、「また紙ができたからいいじゃないか」と思う人はいないでしょう。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20260126
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