白人秩序への反旗と人種差別の本質:満洲国建国とルーズベルトの憎悪
満洲国ができたときに、「有色人種は属国や植民地を持ってはいけない。白人だけの権利だ」という「白人の秩序」に日本がおおっびらに反旗を翻しました。白人側としては、そんなことを許しておくことはできません。幸い、当時の支那は中華民国と中国共産党が争っていて、それに加えてソ連を中心として国際的に陰謀を働くコミンテルンという組織がありました。
白人の秩序を乱す意志と力があるのは多くの有色人種の国の中でも日本だけでしたから、「他の黄色人種は良いけれど、日本だけは許すことはできない」という感情が白人の中に生まれ、特にアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領のようにもともと人種差別的考えを有している人には当然のことでした。
「人種差別」という感情は非常に強いものです。相手を殺してもあまり良心の呵責をじないというぐらい強烈です。だから、ルーズベルト大統領も「日本人は許せない。あの黄色いサルを一匹も地上に残すな」「日本人に対する憎しみは、我々がインディアンに対して持った憎しみと同じだ」と言っています。これでキリスト教徒なのですから驚きです。
ロシアは日露戦争で日本に敗れていますので、普通の状態のときには日本に再び攻める意思はありませんでした。イギリス、フランス、オランダ、ポルトガルなどはアジアの端まで侵略してきたのですが、やや疲れ気味で、日本と戦うつもりはなかったのです。
でも、アメリカは第一次世界大戦でも国内は戦場にならず、かえって経済的には繁栄していましたから、十分に日本と戦うだけの気力がありました。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251022