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yymm77

日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

帰リの廊下で池の女と出逢う

帰リの廊下で池の女と出逢う



三四郎は帰ろうと挨拶をして、部屋を出て玄関正面へ来た。向こうを見ると長い廊下のはずれが四角に切れて、ぱっと明るく見えた。その上がリロに池の女が立っている。ハッと驚いた三四郎の足は歩調が狂った。
その時‘透明な空気の画布(カンヴァス)の中に暗く描かれた女の影は、一歩前に動いた。二人は一筋道の廊下のどこかてすれ違う運命にある。互いに近づいてきたが、女は急に後ろを振リ返った。しかし、後ろには明るい初秋の緑が浮いているばかリで何もなかった。その間に、三四郎は女の姿勢と服装をすばやく見た。着物の色は何色というかわからないが、大学の池の水へ曇った常盤木の影が映る時のようである。それを鮮やかな縞が、上から下へ貫いている。
その縞が揺れ動いて重なったリ、二筋に割れたリする。それを広い帯で締めて暖かい感じがする。多分黄色が入っているからだろう。
後ろを振リ向いた時、右の肩が後ろへ引けて、左手が腰に添ったまま前に出た。
ハンケチを持っている。そのハンケチが指の間からさらリと開いている。おそらく絹のハンケチだろう。腰から下は正しい姿勢である。
女はやがて元通リに向き直った。眼を伏せて二歩ばかリ三四郎に近づいた。
そして、突然、首を少し後ろに引いてまともに男を見た。女は二重瞼の切れ長の落ち着いた恰好である。眼は黒い眉毛の下に活きている。同時に綺麗な歯が現れた。この歯とこの顔色とは三四郎に取って忘れられない対照であった。今日は白いものを薄く塗っているが、本来の地を隠すほどに無趣味てはない。濃やかな肉がほとよく色づいて‘極めて薄く粉が吹いている。てらてら光る顔ではない。肉は頬といわず顎といわず、きちリと締まっている。骨の上に余ったものはたんとないが、それでいて顔全体が柔らかい。肉が柔らかいのではなく骨そのものか柔らかいように思われる。奥行きの長い感じを起こさせる顔である。

『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250426



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