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日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

三四郎は図書館へ行く 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦より

三四郎は図書館へ行く

その翌日から、ニ四郎は四十時間の講義を殆ど半分に減らしてしまった。そして図書館に入った。
けれども何を読むかは、はっきリした考えがない。読んで見なければわからないが何かあの奥に沢山あリそうに思う。
次の日は、入ると早速本を借リた。三四郎は毎日本を八、九冊ずつ借リた。三四郎が驚いたのは、どんな本を借リても、きっと誰か一度は目を通しているという事実であった。それは、書中のここかしこに見える鉛筆の痕である。三四郎は念のためアフラ・ベーン(注2) という作家の小説を借リてみた。よもやと思ったが、見るとやはリ鉛筆で丁寧にしるしが付けてあった。その後、図書館から通リヘ出て、青木堂へ入った。
入って見ると向こうの隅にたった一人離れて茶を飲んでいた男がある。三四郎が見ると、どうも上京の節に汽車の中で水蜜桃を沢山食った人のようである。向こうは気が付かない。茶を一口飲んでは煙草を吸って、悠然と構えている。今日は白地の浴衣ではなく背広を着ている。しかし決して立派なものじゃない。野々宮君よリも白シャツだけがましなくらいなものである。大学の講義を聞いてから以来、汽車の中でこの男の話したことが何だか急に意義のあるように思われ出したところなので、三四郎は傍に行って挨拶をしようかと思った。けれども先方は正面を見たなリ、茶を飲んでは、煙草をふかしている。
三四郎はじっとその横顔を眺めていたが、コップにあるぶどう酒を飲み干して、表へ飛び出した。そうして図書館に帰った。(68)



東京帝国大学図書館の斜め正面

(注2)アフラ・ベーン〈Aphra Behn〉(一六四〇~一六八九)イギリスの女性劇作家・小説家。奴棘問題を扱った小説『オルノーコ』が代表作。『オルノーコ』は第4章の解説参照

『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250421
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