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yymm77

日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

ようやく講義が始まる 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦より

ようやく講義が始まる

それから十日ばかリして、ようやく講義が始まった。三四郎が初めて教室に入って、他の学生とともに先生が来るのを待つ気持ちは殊勝なものてあった。ベルが鳴ってから十五分も待たされたので畏敬の念は一層増した。やがて人品のいいお爺さんの西洋人が入ってきて流暢な英語で講義を始めた。三四郎は真面目に聞いて筆記した。その次には文学論の講義に出た。先生は古来文学者が文学に対して下した定義をおよそ二十ばかリ並へた。三四郎は大事に手帳に筆記した。
午後は大教室に出たが、聴講者が七、八十人ほどいた。先生の話は演説口調であった。
面白いと思って聞いていたが、しまいにはトイツの哲学者の名が沢山出てきてわからなくなった。
隣の男は根気よく肇記を続けている。覗いてみると先生の似顔をポンチ絵に描いていた。
絵は旨く描けているが、その傍に久方の雲井の空のホトトギスと書いてあるのは、意味が
わからない。
三四郎は講義が終ってから、疲れたので窓から正門内の庭を見下ろしていた。野々宮君からこの辺リの昔の話を聞いていたが、とにかく呑気な時代もあったものだと考えていたら、さっきのポンチ絵を描いていた男が来て「大学の講義はつまらんなあ」と言った。三四郎はいい加減な返事をしておいたが、この時からこの男と口を利くようになった。

『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250419

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