恐怖政治のはじまり 「正しければ人をタヒしてもよい」
現在の日本は民主主義国ですが、多くの人の意識はまだ民主主義にはなっていません。ネットなどでは「バッシング」という現象が見られますが、自分の考えだけが正しいとして、他人に発言の機会を与えずに特定の人を罵倒します。これは「自分が正しいと思うことが正しい。相手が自分と違う意見なら相手が間違っている」と思っていることを意味しています。
もし、その人が民主主義の思想を良いとしていれば、「私はそう思うけれど、あなたは違うのですね。どちらが正しいかはわかりませんが、私はこう思います」と言うはずです。
それと正反対な思想が王政や共産主義思想で、「支配者が正しいと考えていることが正しい」ということですから、王政なら王様、共産主義なら共産党員が決めたことが正しいという考えです。つまり、民主主義は「正しいことはわからない」というのが基本思想ですが、王政や共産主義では「正しいことはわかっている」というわけです。
そこで、皇帝のいるロシアが共産主義のソ連になった後、「共産主義が正しいのだから、世界全体に共産主義を広めよう」ということになりました。しかしこれは、絶対権力者が皇帝ニコライニ世からレーニンに代わっただけだったので、後のスターリンの「恐怖政治」を生みます。
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)
『ナポレオンと東条英機』武田邦彦 ベスト新書(2016)より R0720251008