◎日本人は新しいコンセプトを打ち出すのが苦手
武田: 昔、学生には、よく小売の例で話をしました。
昔はデパートができた。それはいまからもう百年以上前ですね。三越とか高島屋というのは、かつては華やかなものだった。そして、そのうち一九六〇年代にはスーパーマーケットが出てきた。スーパーが出てくると、最初のうちは何かいろいろ言っているけれど、「便利だな」となる。次に七〇年代になると、コンビニエンスストアー(注16 日本におけるデパート、スーパー、コンビニ)というのが出てくる。「あんなに小さくて商品が少ない店がスーパーに勝てるはずないじゃないか」と言われていたのが勝ってしまう。
学生には、「みなさんがもし、経営感覚にすぐれていたら、コンビニの次を提案してきてください。そしたら、そこで社会は変わるから」と。そして、私は、「スーパーもコンビニもアメリカ人が発明して、日本人がひとつも発明してないのがさびしいから」と言います。
別にどうしてもイノベーションをしなければならないわけではないのですが、私はそういうコンビニの次が出てきたり、スターバックスなどが出てくるような、どんどんイノベーションが起こるような社会の方が明るいような感じがするんです。とくに若い人にとって、そういう雰囲気が重要だと思うんです。
しかし、日本人はできてきたもの、たとえばスーパーをうまくやる、コンビニをさらに改造するというのはうまいのですが、新たなものを生み出すというのは、苦手なようですね。
日下: それはありますね。
コンセプト商売っていうのが二十年くらい前から入ってきたんです。日本人はコンセプトは思いついても人に教えない。黙ってやる。アメリカ人は高々と掲げてやる。そして、チェーン展開するから、いかにも成功しそうに言わなければいけない。そして、人のふんどしで売上高をのし上げる。従業員も得体の知れない有象無象の寄せ集めだから、先にコンセプトを言わなければいけない。それでやる気をつける。
それを日本人も真似して、それはそれで成功したんですが、それをやっていると、口のうまいやつがはびこってしまう(笑)。
武田: そう、そう。そういうところがある(笑)。
日下: 学生でもプレゼンテーションが大事とか言って練習している。
それも悪くはないのかもしれない。
(注16) 日本におけるデパート、スーバーマーケット、コンビニ世界初の百貨店と言われているのは、一八五二年にパリにできたポン・マルシェ百貨店。
日本では、一九〇四年に東京・日本橋に三越百貨店ができた。
日本で最初のスーパーマーケットは一九五三年に開店した東京・青山の「紀ノ国屋」と言われている。爆発的ともいえる勢いで創業と開店が増えたのは一九五八~六三年頃で、一九六〇年が日本のスーパーマーケットの創業期と言われる。ちなみに紀の国屋が開店して二年後の一九五五年には全国に四十店のスーパーマーケット、一九五七年には二百八十三店のスーパーマーケットが誕生。
日本で初期のコンビニは一九六九年のマミー、一九七〇年のココストア、一九七三年のファミリーマート、そして一九七四年のセブンイレブン。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
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