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日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

広田先生の引越し 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より

広田先生の引越し

広田先生の家は急に決まった。本郷の西片町十番地への三号である。三四郎は引越しの手伝いを頼まれた。明日の天長節に引越すと言う。三四郎は翌日約束通リ西片町にやって来た。
西洋間、座敷‘茶の間、勝手、下女部屋の他に二階がある。庭には百日紅が枝だけ隣から覗いておリ、大きな桜がある。近くの高等学校で天長節の式が始まった。




ポイント

池の女の登場

その時庭木戸がすうと開いた。そうして思いも寄らぬ池の女が、庭の中に現れた。女は

「失礼でございますが。」

と会釈した。会釈しながら三四郎の顔を見つめている。女の目は、美学の時間に習ったクルーズの画にあるヴォラプチュアス(官能的)な表情である。しかしクルーズの画とは似ていない。女は

「広田さんのお越しになるのは、こちらてこざいましょうか」

と丁寧に聞いたが、三四郎は

「はあ、ここてす」

とぶっきら棒に答えた。

「まだお移リにならないんでございますか」

「まだ来ません。もう来るでしょう」

女はしはし送巡した。手に大きなバスケットを提げている。

風が女を包んだ。女は秋の中に立っている。

「あなたは‥‥‥」と女は三四郎に間いた。

「掃除に頼まれて来たのです」

「じゃ私も少しお待ち申しましょうか」

と女はまだ立っている。三四郎は仕方なく

あなたは‥‥‥」

と同じようなことを聞いた。女は帯の間から一枚の名剌を出してくれた。名刺には里見美禰子とあった。

「あなたにはお目にかかリましたな」

と三四郎が言うと、女は、

「はあ。いつか病院で‥‥‥、それから池の端て」

と、よく覚えている。女も手伝いを頼まれて来たのだ。三四郎はここで初めて、池の女は里見美禰子であることを知ったが、美禰子の官能的な表情に改めて驚いた。それにしても美禰子は二皮の出逢いをよく覚えている。三四郎はますます二人の因縁を感じた。一方、美禰子は三四郎を見て、

「この人は広田先生とも関係のある人だな」

ということがわかった。前同、病院ではよし子から野々宮の友人であることを聞いている。

「いずれ私達の仲間に入ってくるかも知れない。自己紹介をしておきましょう」

と、帯の間から名刺を出して、名前を名乗った。これで三四郎との距離はかなり近くなった。相手の素性がわかれば、美禰子は天性の人懐こさを発揮する。無意識な偽善家( アンコンシャス・ヒポクリット)である。早速二人で仲良く掃除を始めた。

『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250505


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