◎自動車産業が滅びても次が出てくるから大丈夫
日下: しかし、いまはそれほどドライブに行くところはない。やっぱり社会的効用というのはどんどん減って、当たり前になってしまう。その次、それに代わるものは何か。
自動車産業が滅びたら、「もう次がない」と言って、経済を心配する人がいるが、次は必ずあるんです。私が「こうだ」と言ったとき、人は「そんなもの」と言う。しかし、「そんなもの」が、次に来ることが多い。
たとえば、いま、次のものを言うなら化粧品とか入れ歯。入れ歯は昔から言われているが。化粧品はうちの奥さんを見ていても、一ヵ月に何万円か買う。私が自動車をやめたから、月に何万円か浮いたと思ったら、それ以上、奥さんが使っている(笑)。これから、不景気になると、ドレスを買わないで化粧品をぬるだけで済ますから、かえって売れるかもしれない。
中国の金持ちは資生堂好きで、それがだんだん経済的に下の層まで広がってきて、は中国の中流の人がようやく買えるという。
武田: 人口が多いから、深みにいくのにだいぶ時間がかかって(笑)。
日下: だから、自動車産業の次は化粧品だというのはありえないことではない。この歳になると、昔、西友とかダイエーが伸びてきたとか、あるいはイトーヨーカドー、すかいら1く、ローソンなど、「何だ、これは」と言っていたような会社が伸びてきたのを見てきている。
商店街を見ていると、コンビニが一店できると、商店街の店が何軒かつぶれると言われる。コンビニの一日の売り上げは五十i六十万くらい{参考二OO七年セブンイレブンジャパンの平均日販は約六十万円でコンビニの第二位、ちなみに一位は「JR東日本リテールネット」、ローソンは四十八万円、ファミリーマート四十七万円(『日経MJ』より)}だから、一日五十万とすると月に千五百万円、コンビニ―店の年商は一億八千万円ということになるわけです。
小さな商店の年間売り上げが三千万円としたら、六店つぶれる計算になる。商店街とは、旧通産省の定義では食堂以外の店がつながって百店以上あることですが、そういう商店街はもう大方二分の一になった。そんな計算は三十年前からあって、そこら辺の八百屋、魚屋、酒店などがみんなつぶれるのかと議論していたら、そうなってきた。そのくらい有為転変はあるもの、ということで、コンビニはなぜ成功したかっていう歴史の最初から知っているが、やっぱりそれぞれ工夫努力している。
コーヒーショップの「スターバックス」も日本に進出してゼロからはじめたときから知っている。ちょうどそのとき日本で北海道拓殖銀行がつぶれ、大和銀行がおかしくなり、支店が合併して、盛り場の支店の数が半分以下になった。私は「それはみんな、スタバになる」と言ったとき、だれも信じなかったが、本当にそうなってしまった。
武田: あれはカナダですか。
日下: いや、カナダに近いアメリカのシアトル。ユダヤ人の二十何歳の青年(ハワード・シュルツ)がヨーロッパをずっと歩いて、このエスプレッソのにおいと味はアメリカにまだ入っていない。「これをちょっと改良してやろう」と言ってやりだして、当たった。
聞いてみれば、「エスプレッソのにおいと味とは、何だ、それだけか」となるでしょう。
未来事業とか未来産業と言われるものの大方は、最初はそう言われました。
しかし、あとで話をだんだん聞いてみると、出店するときはその町の一番の目抜きのところにまず出す。それが宜伝になり、格になって、そこから展開するとやりやすいといったノウハウがある。
日本の経営コンサルタントは「安いところで小さくはじめて大きく育てなさい」などとケチなこと言うが、その逆もある。成功してみれば、「なるほど」というような理屈はあるんです。スターバックスの日本の一号店は、銀座松屋通り店らしい。
あとから考えればわけがあって、新しい時代はやってくるんですよ。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
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