◎社会に節約をもってくる必要はない
武田: 「環境だ」などと、くだらないことばかり言ったりやったりしていますが、この際、日本は都市の大改造とか、技術の革新、教育の改革などを、どんどんやっていかなければ、危ないと思うんですよ。
リサイクル運動にしても、そんなことが大した効果がないことを国民も薄々わかっているので、リサイクルしていても、実際どれだけリサイクルされているかには興味がないわけです。またダイオキシンの規制にしても、その被害者が果たしてほんとうにいるのか、また、いたとしたらどのくらいいるのかなどということには関心がない。もともと幻であると、すでに知っている感じがある。
つまり、国民は環境、エコの結果にはまった<興味がない。もう空気もなにもきれいだから全部大丈夫なんです。
温暖化もそう。電気を消しても気温などは変わらないけれど、電気を消すということだけをやっている。日本はそういうくだらないことをやっている時間があるのか。私は「ない」と思っているんです。
日下: どんどん電気をつけたほうがいい?
武田: もちろん、どんどん電気をつけなければいけない。明治時代には国民は節約したが、国は軍艦を買った。国際社会は勝負の世界だからそれ.が必要だと。家庭は融和の世界で、あまり夫婦げんかをしてはいけないし、外の勝ち負けの世界とは違う。だから、節約は家庭の中ではいいけれど、社会に節約を持ってくるなと言いたいのです。
日下: 環境問題もそうだが、日本人は、相手がどう出るかばかりを議論して、自分がこう出たら相手がどう出るか、たとえば飛び上がってびっくりするといった議論がまった<ないわけです。
武田: 私が環境問題ともう―つ心配しているのは、工学を学ぶ学生が少なくなっていることです。
高校生の物理の履修者一〇%になってしまいました。十人に一人しか物理を勉強してない。私が大学で工学を教えていて、名古屋大学もそうだし中部大学もそうですが、学生は物理を勉強する気はない。日本はこれまで大学の工学部の学生を毎年、十一万人出してきた。アメリカは六万人です。だから人口比で約四倍の技術者を教育し、それで日本のエ業が有意になった。それが、崩れるのですから。
なぜこんなことになるのかといえば、大人が「物理などやっても仕方ない」と言っているからです。NHKを見て、朝日新聞を読んでいたら「やるな、やるな」と言っている。
それで、日本が中国に負けていいというのならいいですが。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
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