◎日本の努力は、アメリカと中国対抗分だけやればいい
武田: たしかにわからないんですね。予測もしていないものが出てくるんですから。
日下: 「進歩するから努力しろ」なんて嘘を教えたのは、本当にこの二百年くらいの現象ですよ。それは結局、ヨーロッパでは「アジアに行って略奪しろ」という話になる。そはれが割がいいからだ(笑)。だから、進歩と努力は白人にとっては、勉強して、大砲と軍艦をつくつて、泥棒しようということになる。
それも考えてみれば、いつまでも続けることができるわけではない。しゃぶりつくしたら、もうとるものがない。植民地のインドがそうだった。また、日本のように少しは逆らう国が出てきたりする。ともかく軍事の利益率はどんどん減る。
一度それを通り過ぎて、「やっばりその日暮らしがいい」というところへいくと、それが成熟した文明の姿で、落ち着いた文化、人間の姿だ。ヨーロッパはそうなっている。日本はもっと前からそうなっている。ところが、野蛮なのはアメリカで、その野蛮人が世界をかき回している。
日本は、それに対しては、負けない程度にやればいい。勝つほどやると叩かれることになる。
武田: 相手は強力で猜猛な人間だから。
日下: 凶暴なんだから(笑)。
これは一九七〇年ごろからそう思っておりまして、ブッシュジュニアが二〇〇三年にイラク戦争をはじめたとき、ついにそのときが来たと思ったから、自信を持って、そう言い、そう書いてきた。
だから、いま、ここで日本人のみなさんに言いたいのは、日本の努力はアメリカ対抗分、中国対抗分だけやればよい。進歩、向上、発展、豊かさの追求なんてもうやめたらどうか。
実際、若い人は、「フリーターでいい」と、その日暮らしになっているでしょう。私はそれが人間本来の姿だ、そういう人間がやさしいんだと思う(笑)。親は、「オヤジの言うことを聞かないと、将来、地獄を見るぞ」と怒るが、それはわれわれの世代が考える地獄であって、彼らは今が天国ならそれでもいいと考えるんです。
高齢者の健康保全努力も社会全体としては、これ以上は迷惑だと考えるようになるかもしれない。女の男並み願望に代わって、男の女並み願望が出てきているが、それでよいのかどうか。女性は清潔好きだが、環境問題騒動にはそれが感じられる。過剰清潔へ男女ともに熱心になると、人間の健康はかえって悪くなるかもしれない。免疫力の低下とか。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
R070105 P153