◎日本が繁栄している基盤は「日本人のまこと」
武田: もうちゃんと、その予兆が現われている。私は経済学的に見たのではなく、現場から見ると、日本が繁栄している一番のもとは「日本人のまこと」と言うわけです。「誠実さ」です。もともと技術から見た社会が繁栄するには、誠実さ以外にはほとんど支配要因がないんですよ。
工場にいると、日本の工場というのは常に労働者一人ひとりがいい製品をつくろうと思っていることがよくわかります。それも、不思議なことに、賃金とまったく関係ないんですね。いいものをつくれば多くもらえるからという発想などないんですよ。それで、「おまえ、そんなやり方じゃあだめだよ」などと、隣の人を注意するんです。
ァメリカに行くと、隣の人がやっていて、ボルトがはずれていようが何だろうが、注意などしない。まったくわれ関せず。
アメリカではマニュアルが必要で「こういうふうにやりなさい」と書いてあって、監視役がついていて、監視役とマニュアルの組み合わせでやっている。マニュアル通りにやっているかどうか注意するのは監視役の役割で、隣の自分ではないと思っています。それは仕事ではないと。
私は日本の工場に二十年くらいいたのですが、マニュアルも監視役もいらない。
その仕事に対する誠実さが、日本の製造業や科学技術などを支えている。それが日本の世界で一番いいところで、もし日本がそういう誠実さを失ったら、日本はそれで落ちるんじゃないかと。
現在、誠実さを一番失っているのは、「中央」です。中央とは官僚と政治家。税金をもらっているからかもしれないですけどね。
私は、国の役割は、額に汗して働いて、まじめにやるということを強調して、そういうシステムをつくること以外にはないのではないかと思うんです。ところが、それをつくらなければいけないほうが誠実さを失っているわけです。
もうひとつは、それと絡むんですが、「瞬す人間よりも、蝙されたほうが馬鹿だ、悪いのだ」という考え方が浸透するような社会になったら終わりだと思うんですね。
いま、学生に「お金をとられる方が悪いのか、とる方が悪いのか」と質問すると、まだ、八割の学生は「とる方が悪い」と答えます。しかし、二割の学生は「とられる方が悪い」と思っている。とられないようにカギを三重、四重にかけなければいけない、とられる心配をするような社会になったらだめだと、私は思います。
私が工場で働いていたのはいまから四十年も前ですが、いまも職場の雰囲気も工場の労働者の気質は全然変わっていませんね。誰かが監視したり見たりしなくても、すみからすみまでまじめなんですよ。
日下: それは臨時エが多くなっても?
武田: 臨時エが多くなっても、やっばり日本人はみんなまじめですね。それが非常に財産で、だからこそいい商品ができる。
日下: それがアメリカ人とは違う(笑)。
武田: アメリカ人とは違う。日本人って、よくわからないのですが、全員が経営者なんはですよ。
日下: あとあと、先々、前後左右までみんな考えて。
武田: そう、いいものつくらなければと。だから、給料分だけ働くなんて思想はほとんどないんですよ。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より R070117 P183