◎学生が(うそまみれの)新聞を読まないのは良いこと
日下: NHKの中で議論があったかどうかは想像ですが、サラリーマンだから上の顔色を見ていると思う。上がそれでいこうとなったら、下は反対はしないだろう、それがサラリーマン根性です。報道の世界にもそれが広がっているとしたら大問題です。財界・官界・政界の人がサラリーマン化して……ということは保身第一になっている。それから学界にもそれがあり、今や報道の世界も保身第一病にかかっている人が多いとなると、これは大変なことです。そんなところが提供する情報は百害あって一利なしです。
その意味では、学生が新聞を読まないのは良いことかもしれません。一時高度情報化社会到来論が説かれたとき、私は、そんな気配は全然ない、むしろ低級情報化社会なら到来すると書いたことがあります。テレビがそうなり、その結果、テレビも視聴率がどんどん落ちています。その逃げ道がセンセーショナリズムで、そこではスキャンダルと安物科学汲報道が花盛りです。
武田: 日経新聞が小学生の環境教育をしようというので、企業に頼んで広告特集を出したんですね。その記事によると、各企業の環境教育担当者が、温暖化のせいで、南極の氷が融けている映像や海水面が上がってツバル(南太平洋の島国)が沈んでいるという映像を見せた。十校くらいが対象でしたが、それらを見て小学生が真っ青になっていたというのが記事に出ていました。
私は校長先生と企業の社長さんに手紙を出しました。
環境問題が大切だという気持ちはよくわかるが、四つも嘘をついている。
事実は「南極は温暖化していない」「南極の氷は減っていない」「海水面も上がっていない」「ツバルが沈んでいるところは海水面があがっているのではなく地盤沈下によるものである」にもかかわらず、その反対を言っているということです。もともとツバルを沈めようとしたら海水面を一メートルは上げなければならない。なにしろ太平洋を全部、一メートル上げるのだから膨大な水がいりますが、北極は関係がないし南極からも水が来ないとなると、水の元栓が無い状態です。
こんな初歩的なことで子どもを青ざめさせることが、日本の子孫にプラスになるのか。
こんなことをやって、「いったいあなたがたは何をやっているのか」と、マスコミや企業に言いたいんです。
日下: 本当ですね。大賛成です。なぜNHKなどマスコミがそういうインチキをするか。
私は、文科省が税金を使って、安物サイエンスというインチキをやたらと振りまいているのがまず問題だと思う。しかも、それを入学試験という圧力で子供にたたき込んでいる。
そしてそういう試験に通った人が新聞社やテレビ局などに入り、「俺は頭がいい」と錯覚して、科学記者などになっている。
しかし、科学記者は出世コースから外れている。上の方から、「センセーショナルな記事を書け」と商業的な命令があれば、記者として環境問題は話題をつくれるチャンスだと思うだろう。
そして、日本の普通の人たちは理科が苦手、科学が苦手というのが染みついてしまっている人が多い。そういう人たちは、彼らが書いた記事を簡単に信じ込んでしまうことになる。一度流れができると官庁はそれに予算をつける。環境対策に予算がつくと一部の学者環が迎合する。学者が言えばたいていのインテリは盲信する。
武田: そうですね。日本ではたいていの人は理科などは学校で教わるだけで、日常生活ではほとんど関係がない。科学マインドがないから、コロリと願されることになる。でも、冷蔵庫の中にお湯を入れると霜がつきやすいのは十分に知っているのに、温暖化すると南極の氷が融けると思うのですから、科学のマインドというよりなにか別のものが欠けているのかも知れません。
日下: 南極探検で有名な白瀬大尉が早稲田の大隈重信総長に出発の挨拶に行ったら、「体に気をつけろ、あまり汗をかくな」と言われたので、「南極は寒いんですよ」と答えると、「そんなバカな、南へ行くのではないか」と言ったという話がある。南は暑いという科学以前の常識があったという話です。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
R061219 P94