◎ そのわけ

ダイコンを育てたことがありますか?
種をまくときには、最後に収穫するダイコンの10倍以上の種をまきます。
ダイコンの芽が出て、本葉3枚ぐらいのときに2本に間引き、本葉が5枚の時に1本にします。これはいつも「君は競争しているのだ」ということを感じさせるためです。
生き物は「競争しないと力が出ない」ものです。「そんなこと、かわいそうだ」と言ってもこの地球に生き物が誕生して以来、その原理原則で生き物は進化してきたのですから、受け入れなければなりません。森に茂っている樹木も同じことです。森に木を植えると、それが立派に生長するまで、何回か間引き、枝打ちをする必要があります。これができないと現在の日本の森林のように質が悪い細い杉がぎっしりと埋まった状態になります。質が悪いため誰も買わず、日本は世界でも有数の森林国なのに、その利用率は40%しかないというとても恥ずかしい状態になってしまいました。
そして誰も使わない杉が、日本の森を覆い、そこから出る杉の花粉で、花粉症になって苦しんでいるのです。
日本の森が衰退した原因の一つが「マイ箸運動」です。
間伐や枝打ちをしたときに出る木材は細いので、もちろん、材木としては使えません。
使い道と言えば、割り箸、楊枝、合板などです。昔の人は、細い枝は細い枝なりに、落ち葉は堆肥に、そして立派な樹木は材木として利用したのです。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251207
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