◎日本が弱腰外交なのは?
武田: 私もそういうふうに思うんですよ。日本はいい顔ばかりしていたら、外国にどんどんつけ込まれるばかりだから、日下さんが言っているように、時にバーンと強気でいかなければいけないわけです。本音を言えば相手も本音が出てくるけれど、言わなければ出てきませんからね。日本の外交ないし政治では、中国に対してもほとんど言わないし,
超弱腰だというのは、何か理由があるんですか。
日下: 理由は、ただの秀オを外交官試験で採用しているからいけないんですよ。今は一般の公務員試験の中からの採用になりましたが、その上に特別の外交官試験はあった方がよい。それから民間登用もあるべきです。
武田: なるほど。
日下: 私が前に言っていたのは、『塀の中の懲りない面々』`という本を書いた安部譲二を外務大臣顧問にしろと。というのは、喧嘩出入りも国際会議も同じだからです。
武田: いわば国際関係は喧嘩みたいなものですからね。一種の脅かしたり引いたりしなきゃいけない。
日下: それで国民は目覚めて安倍晋三を総理大臣にした。安倍さんは本当にそういう外交をした。私は安倍さん本人から聞きましたが、新聞はまったく書いていない。なんで書かないのかと思っているわけです。安倍さんもすべてを私に言ったわけではないが、わかりやすい方から言えば、温家宝が「東京に行くぞ」(二〇〇七年四月十一i十三日、温家宝中国首相は日本を訪問)というとき、自分が訪日するには、首相に対して「李登輝を日本に入れてはいけない」とか「靖国へ行ってはいけない」などと、いろいろと注文をつけた。そのとき安倍さんは、「別に来てくれなくてもいっこうに構わない」と返事をしろと言ったら、外務省の局長が嬉しそうな顔をして「はい」と言ったと。これは安倍さんから聞いた話です。それで、どうなったかと言うと、「やっばり行きます」と温家宝はのこのこと来日してきた。
武田: ほんとうにそうですよね。そういう是々非々外交をやってもらいたい。
私は技術者だから技術者がこれだけ頑張ってGDPあたりのエネルギーを下げてきたんだから、政治のほうも、その夢を先に続けるように頑張ってもらいたいと思うんですけどね。
日下: それからもう一っ言ったことはね、安倍さんが北京へ訪問したとき(二〇〇六年十月八日の訪中)に、ずらりと偉い人が並んでいるでしょう。その中で温家宝が先頭にいた。安倍さんは温家宝のところにすたすたと歩いて行って、「ニイハオ」と言ったかどうか、ともかく挨拶して握手しながら、「中国にも北朝鮮の拉致問題がありますね」と言った。
すると温家宝は棒立ちになった。これはテレビに映った。
あとは私の解説ですが、中国にも拉致問題がある。アモイで中国人が拉致されて、これは世界中の新聞にもう書いてあることなんです。「ありません」と言えば嘘になる。世界が信用しない。「あります」と言ったら、日本から「じゃあ、拉致問題を一緒にやろう」と言われるから、そうも言えない。
温家宝はそのとき「まだ詳しい報告は受けていません」と答えたという。そのとき、もう少し突っこめばよかったのにと思うのです。たとえば、「報告が入ったら待っていますから、教えて下さい」と言えばよかった。が、安倍さんはそこまではやらなかった。
しかし、その一発が効いたのか、翌日からの会議で温家宝は何も日本に対して言わなかった。
なぜ温家宝が棒立ちになったか。多分、温家宝はその質問だけは安倍さんに言わせないように、事前に日本の外務省や政治家などに工作をしてあった。そのエ作がうまくいかなかったのを知って驚いたということ。
つまり、安倍さんには新しい工作網をつくらなければいけない。さらに明日胡錦濤に叱られるというのがあったのではないか。その三つが重なったわけです。
武田: それは安倍さんが大したものですね。だいたいパッと言わないと、会議場などでは言いにくいですからね。
日下: 握手しているときに言うのがコツですよ。しかし、このことについては、私が「新聞記者に言いましたか」と聞いたら、「言いましたよ。しかし、誰も書かない」と。
『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より
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