四十四 エゴティズム
エゴテイズムはエゴイズムとは違う。自尊の心が内にあって、もしみずから持すること高ければ、人の言行などはもはや問題ではない。人の悪口をいうにも及ばず、またとりたてて人をほめて歩くこともない。そんな始末におえぬ人間の姿は、同時に「葉隠」の理想とする姿であった。
「人事(ひとごと)を云ふは、大なる失なり。誉むるも似合はぬ事なり。兎角(とかく)我が丈をよく知り、我が修行を精出し、口を慎みたるがよし。」(聞書第二 一七六頁)
『葉隠入門』三島由紀夫 (新潮文庫) 20240908 P80