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yymm77

日本を潰そうとする強大な勢力に、対抗するために、、、、

二十八 教訓

二十八 教訓

日本の社会がいまなお先輩、後輩の序列にしばられて、年齢の懸隔を超越した、平等のディスカノシ ョンの機会を与えられないことは、現代の会社の中の人間関係を見ても、その他あらゆる社会の人間関係を見ても、すぐ目につくことである。
初めはいやいや教訓をうけたまわっていた若い人たちも、やがて自分が教訓を与える立場になると、もはや人から教訓を受ける機会はない。かくて精神の停滞が始まり、動脈硬化が始まり、社会全体のさけがたい梗塞状態が始まるのである。日本はふしぎに近代史を見ても青年の意見がおそれられるのは動乱の時代であり、しばらく平和な時代が続くと青年の意見は無視されるようになる。中国の紅衛兵問題は、日本のある若い人たちに痛快な刺激を与えた。しかも若い人々の意見が、社会にプラスになるように、巧みに一定の水路に導かれることは、きわめてまれである。紅衛兵問題の混乱もその一例であり、昭和十年代の日本における百年将校の思想が、さまざまな曲折のうちに結局悪しき政治目的に利用されたのもそれであった。近代史において、青年の意見がそのまま国の根幹をゆるがし、かつ国の形成に役立ったのは、明治維新をおいてほかにはない。
「世に教訓をする人は多し。教訓を悦ぶ人はすくなし。まして教訓に従ふ人は稀なり。年三十も越したる者は、教訓する人もなし。されば教訓の道ふさがりて、我儘なる故、一生非を重ね、愚を増して、すたるなり。故に道を知れる人には、何とぞ馴れ近づきて教訓を受くべき事なり。」(聞書第一 一五〇頁)
常朝は、ここでも独特のリアリズムを発揮して、これだけ長々と、聞書の文章を口伝しながら、一言「教訓を悦ぶ人はすくなし。」とつけ加えることを忘れない。

『葉隠入門』三島由紀夫 (新潮文庫)   20240823  P68
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