裏話 その2
10年ほど前はスーパーが、買い物をしたお客さんにレジ袋を無料で渡していました。そして、市民はそれでゴミを出していました。レジ袋は、スーパーが1枚l円(名古屋市のスーパーが公式の場所で発言した仕入れ値)~3円(レジ袋の買い値と言われてきた値段)程度で用意していたので、かなり膨大な出費になります。
商売ですから何とかしたいと思っていたでしょう。
そんな時に、まず、自治体が「隣町と話すのがイヤだ」ということで、「専用ゴミ袋」でなければならないという規則を作ってくれました。
スーパーは「専用ゴミ袋」を販売して大きな儲(もう)けになりました。
スーパーにとってはレジ袋を無料で配るという問題はまだ解決しませんでしたが、同じ最のゴミ袋を有料で売れるようになったのですから、一息ついたのです。
「もったいない」という意味ではどうでしょうか? 石油製品メーカーは、レジ袋と専用ゴミ袋の両方を生産するようになったのですから、石油の消費量は約2倍になったのです。
普段から、「環境が大切」と言っている自治体がこんなことをするはずがないと思うでしょうが、事実は、自分たちの仕事が楽になることだけを考えているのです。
でも、市民から見れば、強制的に専用ゴミ袋を買わなければならなくなったので、明らかに増税です。
さて、「専用ゴミ袋」が定着してくると、自治体とスーパーの共同作戦は第二段階に入りました。
自治体は、「レジ袋を使い捨てするのはもったいない 」と言い始め、「レジ袋を専用ゴミ袋に詰めて出すのはゴミの二重包装」という変な狸屈を持ち出したのです。
実は、市民の方は、レジ袋を「使い捨て」するどころ力家庭では汚いものを包んだり、ちょっとしたものを子供に持たせたり、結構、菰宝して>ました。そして最後にゴミ出しに使えるのです。
私は大学で教えていますが、ある学生が「先生、レジ袋を追放するって言ってますけれど、あんな便利なものをなぜ、追放するのですか。ボクにとってはレジ袋よりNHKの方がいらないのに」と言っていました。
学生らしく自由奔放な発想ですが、ポイントはついています。「レジ袋をタダでもらい、民放を見ていれば」学生は節約ができますが、「マイバッグを買い、NHKの受信料を払う」のは親のすねをかじっている学生には辛いのです。
でも、レジ袋追放は成功しつつあります。今、レジ袋を5円で売るところが増えてきましたので、スーパーはお金を払って仕入れていたレジ袋をタダでお客さんに渡さずにすみ、おまけにお客さんから5円をもらえるようになって大助かりです。
でも、このレジ袋追放作戦には無理があります。正確なことはすぐ後のちゃんとした説明のところで解説しますが、自治体とスーパーは作戦を成功させるために、「アメとムチ」を用意しました。
アメは「マイバッグ・ポイント」です。
マイバッグを買ったり、持って行ったりするとレジでポイントをくれて、それを貯めると何かをもらえるという仕組みです。大きく儲けて少しプレゼントをするというのは、いつも使われる手です。
ムチは「レジ袋は悪」という宣伝をすることです。
何しろ、レジ袋を使うのが後ろめたくなり、マイバッグを買ってくれたり、「レジ袋を使うなら、悪いことをするのだから5円払え」と言えるようになれば、さらに儲かるからです。
だいたい、レジ袋追放のCMがあるということが奇妙です。CMには膨大なお金がいります。宣伝をするときには「宣伝にかかるお金より、宣伝することによって、もっと儲かる」という見通しがなければテレビなどを使うことはありません。このことでも、レジ袋を追放するといかに儲かるかがわかります。
『家庭で行う正しいエコ生活』武田邦彦 平成21(2009)年 講談社刊より 20251126
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